【歯科医解説】奥歯にジルコニアは大丈夫?対合歯への影響と注意点を解説
皆さん、こんにちは。
神戸市西区にある「おち歯科クリニック」の院長 越智敏幸です。
「ジルコニアクラウンを奥歯に使いたいけど、対合歯が削れるって聞いたことがある…」
このような疑問や不安を感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ジルコニアクラウンを奥歯に使用する際は、対合歯への影響を最小限に抑えるために、歯科医による綿密な診査と治療計画が不可欠です。
この記事では、ジルコニアクラウンと対合歯の関係性や、奥歯へのジルコニア使用時の留意点について、歯科医の立場から詳しく説明していきます。
>>「【完全ガイド】ジルコニアとは|歯科用セラミックの選び方」はこちら
目次
ジルコニアクラウンとは?特徴と利点
ジルコニアクラウンとは、ジルコニアという素材を使用した歯科用の被せ物のことを指します。ジルコニアは、高強度のセラミック材料で、自然な歯に近い色調を再現できることから、近年注目を集めています。
ジルコニアクラウンの定義と構造
ジルコニアクラウンは、歯科医が患者様の歯を削り、その上からジルコニアで作られた被せ物を装着する治療法です。ジルコニアは、酸化ジルコニウムを主成分とするセラミック材料で、高い強度と粘り強さを持っています。
ジルコニアクラウンの特徴
ジルコニアクラウンには、以下のような特徴があります。
▶高い強度と耐久性
ジルコニアは、従来のセラミック材料よりも高い強度と粘り強さを持っています。そのため、ジルコニアクラウンは、長期的な使用に耐えることができ、咬合力の強い奥歯にも適しています。
▶優れた審美性
ジルコニアクラウンは、自然な歯の色調と透明感を再現することができます。また、歯茎との境目もスムーズに仕上げることができるため、審美性に優れています。
▶生体親和性
ジルコニアは、生体親和性が高く、アレルギー反応を起こしにくい材料です。そのため、金属アレルギーをお持ちの患者様にも安心して使用していただけます。
ジルコニアクラウンの利点
ジルコニアクラウンには、以下のような利点があります。
▶長期的な使用が可能
ジルコニアクラウンは、高い強度と耐久性を持っているため、長期的な使用が可能です。適切なケアを行えば、10年以上使用することができます。
▶自然な見た目の再現性
ジルコニアクラウンは、自然な歯の色調と透明感を再現することができるため、審美性に優れています。他の人から見ても、自然な歯と区別がつきにくいです。
▶金属アレルギーへの対応
ジルコニアは、金属アレルギーを起こしにくい材料です。そのため、金属アレルギーをお持ちの患者様にも安心して使用していただけます。
ジルコニアクラウンが今注目される理由
近年、ジルコニアクラウンが歯科治療で注目されるようになってきました。それには、いくつかの理由があります。
セラミッククラウンとの比較
従来のセラミッククラウンと比べて、ジルコニアクラウンは強度と耐久性に優れています。セラミッククラウンは、かみ合わせの力で欠けたり、割れたりすることがありましたが、ジルコニアクラウンは、そのようなトラブルが少ないのです。また、ジルコニアクラウンは、セラミッククラウンと同じように、自然な見た目を再現できます。
患者のニーズの変化
歯科治療を受ける患者様のニーズが変化してきていることも、ジルコニアクラウンが注目される理由の一つです。以前は、虫歯の治療が中心でしたが、最近は、見た目の美しさを求める患者様が増えてきました。ジルコニアクラウンは、自然な見た目を再現できるため、このようなニーズにも応えることができます。
技術の進歩と普及
ジルコニアクラウンを作るための技術が進歩し、普及してきたことも、注目される理由の一つです。以前は、ジルコニアクラウンを作るには、特別な設備が必要でしたが、最近は、多くの歯科医院で作れるようになってきました。また、コンピューターを使った設計や加工技術の進歩により、より精密で自然な見た目のジルコニアクラウンを作ることができるようになりました。
ジルコニアクラウンと対合歯の関係性
ジルコニアクラウンを検討する際には、対合歯との関係性を理解することが大切です。
対合歯とは何か
対合歯とは、上の歯と下の歯が噛み合う時に、直接触れ合う歯のことを指します。例えば、上の奥歯にジルコニアクラウンを入れる場合、下の奥歯が対合歯になります。
ジルコニアクラウンが対合歯に与える影響
ジルコニアクラウンは、硬くて丈夫な素材でできているため、対合歯に影響を与える可能性があります。
▶咬合力の変化
ジルコニアクラウンを入れることで、噛み合わせの力加減が変わることがあります。これは、ジルコニアクラウンの形状や高さが、天然の歯と少し違うことが原因です。噛み合わせが変わると、対合歯に余分な力がかかり、負担が大きくなることがあります。
▶摩耗の可能性
ジルコニアクラウンは硬い素材なので、長期間使用していると、対合歯を少しずつ削ってしまう可能性があります。これを歯の摩耗と言います。歯が摩耗すると、痛みが出たり、噛み合わせが変わったりすることがあります。
ただし、これらの影響は、ジルコニアクラウンの調整が適切に行われていれば、最小限に抑えることができます。歯科医師がジルコニアクラウンの形を慎重に整え、噛み合わせを確認することで、対合歯への負担を減らすことができるのです。
ジルコニアクラウンによる対合歯への影響はあるのか?
ジルコニアクラウンが対合歯に影響を与える可能性があることは分かりましたが、実際にはどの程度の影響があるのでしょうか。
対合歯への影響に関する研究
ジルコニアクラウンが対合歯に与える影響については、いくつかの研究が行われています。ある研究では、ジルコニアクラウンを入れた患者様の対合歯を観察したところ、わずかな摩耗が見られたケースがありました。ただし、その摩耗の程度は、天然の歯同士が噛み合った場合と比べて、大きな差はありませんでした。
また、別の研究では、ジルコニアクラウンを入れた患者様の噛み合わせを調べたところ、適切な調整が行われていれば、対合歯への負担は小さいことが分かりました。
影響を最小限に抑えるための対策
ジルコニアクラウンによる対合歯への影響を最小限に抑えるためには、いくつかの対策が重要です。
▶適切な咬合調整
ジルコニアクラウンを入れた後は、歯科医師が噛み合わせを細かく調整することが大切です。これを咬合調整と言います。咬合調整によって、ジルコニアクラウンと対合歯が適切に噛み合うようになり、対合歯への負担が減ります。
▶定期的なメンテナンス
ジルコニアクラウンを入れた後は、定期的に歯科医院でメンテナンスを受けることが重要です。メンテナンスでは、ジルコニアクラウンの状態を確認し、必要に応じて調整を行います。また、対合歯の状態も確認し、摩耗がないかどうかをチェックします。
これらの対策を行うことで、ジルコニアクラウンによる対合歯への影響を最小限に抑えることができます。
ジルコニアクラウンで対合歯が傷つくケースとは
ジルコニアクラウンは適切に調整されていれば対合歯への影響は少ないと言われていますが、場合によっては対合歯が傷つくこともあります。
不適切な咬合調整による影響
ジルコニアクラウンを入れた後の咬合調整が不適切だと、対合歯が傷つく可能性が高くなります。例えば、ジルコニアクラウンの高さが高すぎたり、噛み合わせが強すぎたりすると、対合歯に過度な力がかかってしまいます。その結果、対合歯が欠けたり、痛みが出たりすることがあるのです。
ブラキシズム(歯ぎしり)の影響
ブラキシズムとは、無意識のうちに歯を食いしばったり、歯ぎしりをしたりする習慣のことです。ブラキシズムがあると、歯に強い力がかかるため、歯が傷つきやすくなります。特に、就寝中のブラキシズムは気づきにくく、歯への影響が大きいことがあります。
対合歯の状態による影響
対合歯自体の状態によっても、ジルコニアクラウンによる影響が大きくなることがあります。例えば、対合歯が虫歯になっていたり、既に他の治療を受けていたりする場合は、健康な歯よりも傷つきやすくなります。また、歯並びが悪く、噛み合わせに問題がある場合も、対合歯への負担が大きくなります。
このように、ジルコニアクラウンによる対合歯への影響は、様々な要因によって異なります。対合歯の状態に問題がある場合は、ジルコニアクラウンを入れる前に、歯科医師とよく相談することが大切です。
奥歯へのジルコニアクラウン使用時の注意点
ジルコニアクラウンは奥歯にも使用されますが、奥歯特有の注意点があります。
奥歯の特徴と注意点
奥歯は前歯と比べて、噛む力が強い部分です。食べ物を細かく砕くために、大きな力が加わります。そのため、奥歯に使用するジルコニアクラウンは、特に丈夫で耐久性が高いものを選ぶ必要があります。
また、奥歯は歯ブラシが届きにくく、虫歯になりやすい部分でもあります。ジルコニアクラウンを入れた後は、しっかりと歯磨きをして、清潔に保つことが大切です。
適切な症例選択
ジルコニアクラウンは多くの場合に使用できますが、全ての患者様に適しているわけではありません。例えば、歯周病の状態が悪い場合や、噛み合わせに大きな問題がある場合は、ジルコニアクラウンの使用を避けた方が良いこともあります。
また、ジルコニアクラウンを入れる前の歯の状態も重要です。虫歯が大きく進行していたり、神経を取らなければならなかったりする場合は、ジルコニアクラウンを入れるのに適していないことがあります。
歯科医師との相談の重要性
奥歯にジルコニアクラウンを使用するかどうかは、歯科医師とよく相談して決めることが重要です。歯科医師は患者様の口の中の状態を詳しく診察し、ジルコニアクラウンが適しているかどうかを判断します。
また、ジルコニアクラウンを入れた後のケアについても、歯科医師から指導を受けることが大切です。定期的なメンテナンスを受けることで、ジルコニアクラウンを長持ちさせることができます。
奥歯へのジルコニアクラウン使用は、適切な症例選択と歯科医師との相談が何より重要なのです。
ジルコニアクラウンのメリットとデメリット
ジルコニアクラウンにはメリットとデメリットがあります。それぞれについて詳しく見ていきましょう。
メリット
▶長期的な耐久性
ジルコニアクラウンは、非常に丈夫で耐久性が高いことが大きなメリットです。適切にケアをすれば、10年以上使用できる場合もあります。長く使えるということは、再治療の必要性が低くなり、患者様の負担を減らすことができます。
▶自然な見た目
ジルコニアクラウンは、色や透明感が天然の歯に近いので、自然な見た目に仕上げることができます。他の人から見ても、治療したことが分かりにくいのが大きな利点です。特に、前歯など目立つ部分の治療には適しています。
▶アレルギーへの対応
金属アレルギーをお持ちの患者様にとって、ジルコニアクラウンは良い選択肢となります。ジルコニアは金属ではないので、アレルギー反応を起こす可能性が低いのです。
デメリット
▶費用が高い
ジルコニアクラウンは、他の種類の被せ物と比べて費用が高いことがデメリットです。材料費が高く、製作に手間がかかるため、治療費が割高になる傾向があります。ただし、長期的な耐久性を考えると、コストパフォーマンスは良いと言えるでしょう。
▶修理が難しい場合がある
ジルコニアクラウンは丈夫ですが、万が一欠けたり割れたりした場合、修理が難しいことがあります。部分的な修理ができないため、クラウン全体を作り替える必要が出てくるのです。
▶製作に時間がかかる
ジルコニアクラウンは、歯科技工士が手作業で製作するため、完成までに時間がかかります。通常、1週間から1ヶ月程度の期間が必要です。その間は、仮のクラウンを使用することになります。
以上のようなメリットとデメリットを理解した上で、ジルコニアクラウンを選択することが大切です。
ジルコニアクラウンと金歯(ゴールドクラウン)の比較
歯科治療で被せ物を選ぶ際、ジルコニアクラウンと金歯(ゴールドクラウン)はどちらも選択肢になります。それぞれの特徴を比べてみましょう。
見た目の違い
見た目の自然さでは、ジルコニアクラウンに利点があります。ジルコニアクラウンは、色や透明感を天然の歯に近づけることができるので、他の人から見ても治療した部分が分かりにくいのです。一方、金歯(ゴールドクラウン)は金色の見た目をしているため、目立ちやすいというデメリットがあります。ただし、金歯(ゴールドクラウン)の色調は好みの問題でもあり、中には金色の光沢を好む方もいらっしゃいます。
強度と耐久性の違い
強度と耐久性は、ジルコニアクラウンと金歯(ゴールドクラウン)のどちらも優れています。金歯(ゴールドクラウン)は金合金でできているため、非常に丈夫で長持ちします。歯科治療の中でも最も耐久性が高いと言われています。ジルコニアクラウンは、セラミック材料の中では最も強度が高く、金歯(ゴールドクラウン)に近い耐久性を持っています。
生体親和性の比較
生体親和性とは、歯科材料が口の中の組織になじみやすいかどうかを表します。この点では、金歯(ゴールドクラウン)に利点があります。金合金は生体に対する親和性が高く、アレルギー反応を起こしにくい材料です。ジルコニアクラウンも生体親和性は高く、アレルギー反応を起こす可能性は極めて低いと考えられています。
費用の比較
費用については、一般的には金歯(ゴールドクラウン)の方が安価です。ジルコニアクラウンは、材料費が高く、製作に手間がかかるため、金歯(ゴールドクラウン)よりも費用が高くなる傾向にあります。ただし、歯科医院によって価格設定は異なるので、実際の費用は各医院に確認する必要があります。
長期的な視点で見ると、金歯(ゴールドクラウン)の耐久性の高さは魅力的です。金歯(ゴールドクラウン)は、適切にケアをすれば20年以上使用できる場合もあります。再治療の必要性が低くなるため、トータルの治療費を考えるとコストパフォーマンスが良いと言えるでしょう。
歯科医師と相談しながら、自分に合った被せ物を選択することが大切です。ジルコニアクラウンと金歯(ゴールドクラウン)のどちらにも利点がありますので、見た目、強度、生体親和性、費用などを総合的に考えて決めましょう。
ジルコニアクラウンと対合歯に関する【よくある質問】
ここでは、ジルコニアクラウンと対合歯に関する よくある質問にお答えします。
ジルコニアクラウンは奥歯に使用できますか?
はい、ジルコニアクラウンは奥歯にも使用できます。ジルコニアは高い強度と耐久性を持っているため、噛む力の強い奥歯でも十分に機能します。ただし、歯周病の状態や噛み合わせなど、口の中の状態によっては使用できない場合もあります。かかりつけの歯科医師とよく相談して決めましょう。
ジルコニアクラウンによって対合歯が削れることはありますか?
ジルコニアクラウンは硬い素材なので、対合歯を削ってしまう可能性がゼロではありません。ただし、適切な治療計画のもと、丁寧に調整を行えば、対合歯への影響を最小限に抑えることができます。定期的なメンテナンスを受けることも大切です。対合歯の状態に不安がある場合は、歯科医師に相談しましょう。
ジルコニアクラウンと金属アレルギーの関係は?
ジルコニアクラウンは、金属を使用していないため、金属アレルギーの心配はありません。ジルコニアは生体親和性が高く、アレルギー反応を起こす可能性は極めて低いと考えられています。金属アレルギーをお持ちの方にとって、ジルコニアクラウンは良い選択肢の一つです。
ジルコニアクラウンの耐用年数はどのくらいですか?
ジルコニアクラウンの耐用年数は、口の中の状態や日々のケアによって異なります。適切なケアを行えば、10年以上使用できる場合もあります。定期的なメンテナンスを受け、歯科医師の指導に従って口腔ケアを行うことが大切です。
ジルコニアクラウンのメンテナンス方法は?
ジルコニアクラウンのメンテナンスは、天然の歯と同じです。 毎日の歯磨きを丁寧に行い、歯間ブラシやデンタルフロスを使って歯と歯の間をきれいにします。 また、定期的に歯科医院で専門的なクリーニングを受けることも重要です。 歯科医師の指導に従って、正しい口腔ケアを心がけましょう。
ジルコニアクラウンについて、まだ分からないことがあれば、遠慮なく歯科医師に質問してください。 自分に合った治療法を選択するためにも、しっかりと理解することが大切です。
ジルコニアクラウンと対合歯に関する【まとめ】
本記事では、ジルコニアクラウンと対合歯の関係性について詳しく解説してきました。ポイントを振り返ってみましょう。
ジルコニアクラウンの特徴と利点のまとめ
ジルコニアクラウンは、高い強度と耐久性を持ち、自然な見た目を再現できる歯科治療法です。金属アレルギーの心配が少ないことも大きな利点です。適切なケアを行えば、長期的に使用できるでしょう。
ジルコニアクラウンと対合歯の関係性のポイント
ジルコニアクラウンは硬い素材なので、対合歯に影響を与える可能性があります。しかし、適切な治療計画と調整により、影響を最小限に抑えることができます。定期的なメンテナンスを受けることが大切です。
奥歯へのジルコニアクラウン使用時の注意点の振り返り
奥歯にジルコニアクラウンを使用する場合は、噛む力が強いことを考慮する必要があります。また、虫歯になりやすい部位でもあるため、日々の口腔ケアが重要です。歯科医師と相談しながら、適切な治療法を選択しましょう。
ジルコニアクラウンの適切な使用と歯科医師との相談の重要性
ジルコニアクラウンを適切に使用するには、歯科医師との相談が欠かせません。自分の口の中の状態を把握し、メリットとデメリットを理解した上で、治療法を決定することが大切です。また、治療後のケアについても、歯科医師の指導に従いましょう。
ジルコニアクラウンは、歯科治療の選択肢の一つとして注目されています。対合歯への影響を理解し、適切な使用法を心がければ、長く快適に使用できるでしょう。自分に合った治療法を選ぶために、歯科医師とよく相談することが何より重要です。
おち歯科クリニックでは、患者様一人ひとりのお口の状態に合わせて、最適な治療法をご提案しています。
ジルコニアクラウンについてもっと知りたい、自分に適した治療法を相談したいという方は、ぜひ当院にお越しください。
皆様のご来院を心よりお待ちしております。
おち歯科クリニック
院長 越智敏幸