むし歯があっても宇宙飛行士になれるの?
「宇宙旅行が可能に!」と話題のこの頃ですが、様々な厳しい基準をクリアしなければなれないことで知られている「宇宙飛行士」むし歯があったらどうでしょう?
答え:「むし歯」のままでは宇宙には行けません。
ただし、「フライト前にちゃんと治療すれば大丈夫です」とJAXA(宇宙航空研究開発機構)のフライトサージャン(宇宙航空医学の医師)むし歯があってもきちんと治療していれば問題はなく、歯に詰め物があってもOK。宇宙飛行士は、打上げの前に、外れそうになっている詰め物はないか、飛行中に悪化しそうな歯はないか、歯科医師に検診を受けます。
宇宙飛行士は約0.3気圧に減圧された宇宙服を着て作業をし、宇宙船の中では宇宙服を脱ぎ1気圧の中に戻る、ということを繰り返すのですが、もしむし歯や不十分な治療の歯があると、ひどい歯痛が起こる可能性がとても高くなるのです。
もしも、宇宙で歯が痛くなったら、まず痛み止めの薬を飲みます。どうしてもそれで痛みを抑えることができない場合には、フライトサージャン(医師)の指導の下、他の宇宙飛行士が歯を抜く可能性があります。無重力の状態で歯を削るような治療をしたら、水分や削った粉が飛び散って大変なことになりますし、歯を削る装置は現状では宇宙にありません。
現在、JAXA特別参与、宇宙飛行士として任務を継続中の若田光一さんによれば、「歯を抜く訓練は、地上にて受けている」とのことです(『宇宙飛行』若田光一著より)。
実はこの現象、宇宙空間に限ったことだけではありません。台風の日は、「歯が痛い」と言って急患で来られる患者様が増えます。
なぜなら、歯の中心には「歯髄腔」と呼ばれる神経(歯髄)を収めた空間があり、その周りを象牙質、さらにその外側をエナメル質が包む3重構造になっています。歯髄腔の内部の気圧は通常、外の気圧と同じになるように保たれていますが、短時間に急に外の気圧が変化すると調整が間に合わず、外の気圧と歯髄腔内部の気圧に差が生じる場合があります。
台風をもたらす低気圧は、読んで字の如く気圧が低い状態ですから、これが近づいてくると、歯髄腔の外界の気圧は通常に比べて低下します。その結果、外側の世界と歯髄腔の内部に気圧差が生じ、内部から歯に圧がかかることで、歯が痛むことがあるのです。特に、このような歯の痛みは、健康な歯や適切に処置された歯ではほとんど起こりませんが、むし歯や親知らず、治療途中の歯がある場合には、歯痛が起こりやすいようです。
このような現象が起きるのは、低気圧が接近しているときだけに限りません。同じ場所、同じ気象条件下でも、高度が上がれば気圧は下がりますので、飛行機に乗った場合や高い山に登った場合も同様のメカニズムで歯痛が起こることがあります。ちなみに、飛行機に乗った際に起きる歯痛は「気圧性歯痛」「航空性歯痛」と呼ばれており、航空会社も注意を呼びかけています。
このように日によって、状況によって歯が痛いなどあればむし歯の可能性がありますので、思い当たる所があれば歯医者さんに見てもらいましょう。
当院ではむし歯の予防から治療まで、各種ご相談を受け付けておりますのでお気軽にお問い合わせください。